生存記録
僕にあったことを忘れないための目印……
ある日見えなくなるというのは、
- 2012/10/15 (Mon) |
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未だに自爆した右足が、ひっぱられる感じがします。
続きは久しぶりに小話。
書きながら進めるから、いつも淡々としてしまうのです。
続きは久しぶりに小話。
書きながら進めるから、いつも淡々としてしまうのです。
「置いて行っていいのよ。」
私のことなんて。
そういった彼女の表情は”無”だった。
彼女が盲目になって半年。
身内は年の離れた弟だけで、しかも連絡はずいぶんとっていないという。
早々に両親を亡くしているせいか、彼女は頼るとか甘えるといった行為が苦手だ。
だから唯一の身内にも連絡を取れないのだろう。
今の自分の現状を説明すれば、それは間違いなくSOSになるのだから。
そんな彼女の手伝いをするのは僕だ。
介助という言い方はしたくない、それこそ彼女の考えに反する。
手伝いだって、正直ギリギリだ。
僕らは恋人ではなかった。
半年前に彼女が盲目になった。
目がかすむことから始まり、徐々に視力を失っていった。
僕らは幼馴染だった。
腐れ縁といえるほどに、ともすれば運命の糸で結ばれているかのように、僕らは何度もであった。
僕は彼女のことがずっと好きだった。
近かったから好きになったのかはわからない、僕には彼女しか見えていなかったし、他の女子から告白されるようなこともなかったのだから。
その近い距離を失いたくなくて、幼馴染の関係を壊すことはできなかった。
彼女に恋人ができたときは苦しすぎて、物理的に距離をとって離れたこともあった。
彼女を想う報われない気持ちと恋人への嫉妬も、時間がたてば忘れさせてくれると信じていた。
否、信じなければ強硬手段をとるところだった。
監禁して自分しか見えなくしてしまえばいいなどと、よくある妄想話だ。
よくあるし、実行することなんてないにしても、それだけ僕は彼女を愛していたし欲していたことを改めて突き付けられた。
その努力もむなしく、その1年後に彼女が転勤で僕が引っ越していたところに来た。
人ごみの中で彼女を見つけた時は、ついに幻覚までみてしまったと思った。
ところが彼女も僕を見つけ「ひさしぶり。」と言ったものだから、まぎれもない本人であることが分かった。
転勤になったこと、それと同時に恋人と別れたことを知り、僕は喜んでいいのかわからなかった。
物語のような再会、けれど僕らの仲は進展しなかった。
***
「置いていけばいいのに。」
なんて。
彼女は時々こうして僕を試す。
本当に置いて行ってしまったらどうするんだ、と思ったこともあるが、彼女は何も言わないだろう。
置いて行かれたことを理解し、自分でなんとかしようとするだろう。
迷惑をかけることに彼女は耐えられない。
でも本人も気づいていないかもしれないが甘えられる、あるいは支えてくれる存在を欲しているのは確実だろう。
それが僕であればいいと思うし、少なくとも、今は僕だ。
***
「何も口にしなければ三日で餓死できるわ。」
同情で何年も介助なんてできるもんじゃない。
彼女は何度も僕を試す。
傍にいてくれるのか、と。
彼女は一人で何でもこなそうとして、いつも凛としていた。
その姿に内向的な僕は惹かれた。
だが今いる彼女は、僕には強がっているように見えた。
何も見えない世界。
見えない分、他の感覚が敏感になるとはいえ、視覚からの情報は多い。
表情が見えないから、彼女は言葉から、声から、僕が”どっち”なのか知ろうとする。
だから僕は。
「食べ物にこだわっていただろ? これからもおいしいのいっぱい食べようよ。」
餓死なんて一番つらいだろ、君とって。
手を取って、言葉をかけて、彼女の近くにいる。
***
神様はなんて残酷なんだろう。
それとも彼女を監禁してしまいたいなどと妄想した僕が酷いのだろうか。
ああ、それでも僕の望みは叶えられてしまった。
盲目な彼女は遠くへ行くことはできない。
彼女のそばにいるのは、同情でも、罪悪感でも、ボランティア精神でもない。
「好きだよ。君のことが好きだから傍にいたいんだ。」
そうだ。
これは僕がそばにいたいという、エゴ。
そして彼女は、ありがとう、ごめんなさい、とつぶやくのだ。
私のことなんて。
そういった彼女の表情は”無”だった。
彼女が盲目になって半年。
身内は年の離れた弟だけで、しかも連絡はずいぶんとっていないという。
早々に両親を亡くしているせいか、彼女は頼るとか甘えるといった行為が苦手だ。
だから唯一の身内にも連絡を取れないのだろう。
今の自分の現状を説明すれば、それは間違いなくSOSになるのだから。
そんな彼女の手伝いをするのは僕だ。
介助という言い方はしたくない、それこそ彼女の考えに反する。
手伝いだって、正直ギリギリだ。
僕らは恋人ではなかった。
半年前に彼女が盲目になった。
目がかすむことから始まり、徐々に視力を失っていった。
僕らは幼馴染だった。
腐れ縁といえるほどに、ともすれば運命の糸で結ばれているかのように、僕らは何度もであった。
僕は彼女のことがずっと好きだった。
近かったから好きになったのかはわからない、僕には彼女しか見えていなかったし、他の女子から告白されるようなこともなかったのだから。
その近い距離を失いたくなくて、幼馴染の関係を壊すことはできなかった。
彼女に恋人ができたときは苦しすぎて、物理的に距離をとって離れたこともあった。
彼女を想う報われない気持ちと恋人への嫉妬も、時間がたてば忘れさせてくれると信じていた。
否、信じなければ強硬手段をとるところだった。
監禁して自分しか見えなくしてしまえばいいなどと、よくある妄想話だ。
よくあるし、実行することなんてないにしても、それだけ僕は彼女を愛していたし欲していたことを改めて突き付けられた。
その努力もむなしく、その1年後に彼女が転勤で僕が引っ越していたところに来た。
人ごみの中で彼女を見つけた時は、ついに幻覚までみてしまったと思った。
ところが彼女も僕を見つけ「ひさしぶり。」と言ったものだから、まぎれもない本人であることが分かった。
転勤になったこと、それと同時に恋人と別れたことを知り、僕は喜んでいいのかわからなかった。
物語のような再会、けれど僕らの仲は進展しなかった。
***
「置いていけばいいのに。」
なんて。
彼女は時々こうして僕を試す。
本当に置いて行ってしまったらどうするんだ、と思ったこともあるが、彼女は何も言わないだろう。
置いて行かれたことを理解し、自分でなんとかしようとするだろう。
迷惑をかけることに彼女は耐えられない。
でも本人も気づいていないかもしれないが甘えられる、あるいは支えてくれる存在を欲しているのは確実だろう。
それが僕であればいいと思うし、少なくとも、今は僕だ。
***
「何も口にしなければ三日で餓死できるわ。」
同情で何年も介助なんてできるもんじゃない。
彼女は何度も僕を試す。
傍にいてくれるのか、と。
彼女は一人で何でもこなそうとして、いつも凛としていた。
その姿に内向的な僕は惹かれた。
だが今いる彼女は、僕には強がっているように見えた。
何も見えない世界。
見えない分、他の感覚が敏感になるとはいえ、視覚からの情報は多い。
表情が見えないから、彼女は言葉から、声から、僕が”どっち”なのか知ろうとする。
だから僕は。
「食べ物にこだわっていただろ? これからもおいしいのいっぱい食べようよ。」
餓死なんて一番つらいだろ、君とって。
手を取って、言葉をかけて、彼女の近くにいる。
***
神様はなんて残酷なんだろう。
それとも彼女を監禁してしまいたいなどと妄想した僕が酷いのだろうか。
ああ、それでも僕の望みは叶えられてしまった。
盲目な彼女は遠くへ行くことはできない。
彼女のそばにいるのは、同情でも、罪悪感でも、ボランティア精神でもない。
「好きだよ。君のことが好きだから傍にいたいんだ。」
そうだ。
これは僕がそばにいたいという、エゴ。
そして彼女は、ありがとう、ごめんなさい、とつぶやくのだ。
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